2016年11月12日土曜日

エビでサケを釣る?

 日本では「エビでタイを釣る」と言うけれど、実に華やかでおめでたい感じがしますよね。エビもタイもお祝いの席には欠かせない食材であるし、慣用句としても実際の生活に即した馴染みの良さが耳に心地よく感じます。

エビはエサにしなくても良いんじゃ・・・なんて無粋なことを言ってはいけない(笑)。

 魚釣りのエサとしてエビを見ると、これはまた非常に優秀なエサと言えますね。どんな釣りのエサに使われるか今ぱっと思いつくだけ並べてみると、タイはもとよりスズキ、メバル、カサゴ、アジ、イカ、タコ、マゴチにヒラメと言ったところでしょうか。もちろんブラックバスやコイなど淡水の魚も釣ることができます。

 蛇足ですが、僕自身の記憶の中で釣った初めての魚はフナで、その時のエサはザリガニのむき身でした。この時はもともと友達とザリガニ釣りをしていたのですが、僕は父親からもらった釣り針を使っていたんですね。最初はその針にイカでも付けていたのだと思いますが、やがて先に釣れたザリガニをむき身にしてエサにすると、間違ってフナが釣れてしまったのでした(笑)。そのフナを持ち帰ったところ、大いに褒めてもらったことから僕の釣り人生はスタートしたと言って良いかもしれません!(笑)

娘とハゼ釣りに行った時は冷凍ムキエビを切って使いました。

 ところで、当然かもしれませんが欧米ではタイと言う魚に対して我々が抱くようなめでたい印象を持っていないようです。せいぜい白身で美味しい魚と言った程度です。したがってエビでタイを釣る喜ばしさもまた理解されないと思います。
 しかしヨーロッパ、特にイギリスでエビを使った釣りとして良く知られているのは何と言ってもサケ釣り、サーモンフィッシングです。
 日本の場合、近年調査捕獲として一部釣りが認められている河川も増えていますが、基本的には各自治体の内水面利用規則等によって河川内で鮭を釣ることは規制されています。しかし欧米では、もちろん厳しい規則があるとはいえ、サーモンフィッシングがある種のステータスを誇っていることは周知のところです。
 そしてサーモンフィッシングはルアーやフライフィッシングとしてだけでなく古くから広く餌釣り(コースフィッシング coarse fishing)としても親しまれていました。そのエサの一つとして「プロウン prawn」、つまりエビが用いられています。
 エビと言うと、僕らはシュリンプと言う呼び名に慣れていますが、英語ではシュリンプとプロウンの2つがあって、どの程度明確に区別されているのかはわかりませんが、比較的小型のものをシュリンプ、大型をプロウンを呼ぶようです。一方、ザリガニは大きな爪(ハサミ)があるからクロウフィッシュ craw fish の呼び名もありますね。しかし同じようにハサミがあるのにテナガエビはプロウンのようです。

ハーディ―社カタログに見るプロウンタックル(マウント)。
"Hardy's Anglers Guide Fishing Catalog Season 1911 Reprint" p153.

さて、そのプロウン(エビ)をエサにする際、リーダーの先に結んだフックとは別に、縫い針のようなマウント(台)をリーダーに通しておいて、これをプロウンが真っ直ぐになるようにブスリと刺したうえで外れないように体を糸で巻いてからフックをお尻に引っ掛けるようです。考え方としては日本のテンヤに近いと思います。
 古いハーディのカタログなどを眺めていると、このプロウンマウントと言うものが幾つも掲載されていて非常に興味をそそられます。先に紹介した現在のシンプルなマウントとは異なり、フックがあらかじめ何本かセットされている非常に仰々しいものです。
 一尾のエビを針でがんじがらめにしておいて、食いついたサーモンは決して逃がさないという気合が伝わってくるようです!

ハーディ社カタログに見るプロウンタックル(マウント)。
"Hardy's Anglers Guide Fishing Catalog 1911 Reprint" p154-155.

 さらにこのカタログのページの続きにはミノー(小魚)用のマウントも掲載されていて、こちらもまた仰々しさでは負けていません。ヘッドにフィンがついていて、装着したミノーが水中でくるくる回るようにデザインされたものもあります。

ハーディ社カタログに見るミノーマウント。
"Hardy's Anglers Guide Fishing Catalog 1911 Reprint" p157-178.

イギリスの有名なオールドルアーにデボンミノー Devon minnow と呼ばれる、ボディ前方にフィンがついていて水中で全体が回転するインラインスピナーがありますが、どちらが先に生まれたかはわかりませんが、いずれも、河川に遡上するとエサは食べない、或いは食べにくいとされるサーモンへいかにアピールするかと言う点で苦心した末のアイデアなのでしょうね。

ハーディ社カタログに見るデボンミノー。
"Hardy's Anglers Guide Fishing Catalog 1911 Reprint" p186.

 こういった非常にプリミティブなマウントを見ていると、初期のアメリカ製ルアーの中にファイブフックフック(5本針)のスタイルがあった理由が良くわかるような気がします。パイクやマスキー、それにもちろんサーモンと言った大型の魚を釣るためにはボディ両側に2本ずつ、さらにテールに1本のフックを備えた5本針形式は、それ以前のミノーマウントから素直に導き出されたスタイルだったのかもしれませんね。

これは僕が持っているデボンミノー・スタイルのルアー。

 現在は、魚の習性や捕食の方法などについても良く知られるようになり、また道具の進歩も著しいため、「釣り」そのものが科学的で、かつライトタックル志向に向かっていることは事実だと思います。
 例えマスキー用の巨大ルアーだとしてもフックは5本も必要ないし、前述の通り現代のプロウンマウント(エビの台座)は縫い針程度です。もちろん日本においても、例えば真鯛釣りで「ひとつテンヤ」が人気になるなど、ライトタックル志向は洋の東西を問わず、時代的なムーブメントだと理解して良いでしょう。

カナダで買ったミノーマウント「アンチョビースペシャル」!

 以前、僕はカナダでバスフィッシングをしているときに、ジグヘッドにミノーを付けて餌釣りをしている人を見ました。きっと僕らと同じくバスかパーチでも狙っていたのだと思いますが、その時「そうか、ジグヘッドで十分だな。現代の釣りではもうミノーマウントなんて必要ないんだな」と思ったことを覚えています。
 ところが昨夏(2015年)のカナダ釣行の際、トロント郊外の釣具屋さんで見つけてしまったのです。現代版ミノーマウントを!
 もちろんかつての釣り針雁字搦めではありませんよ。フックは1本です。しかしプラスチック製のヘッドカバーがついていて、これをエサとなる魚の頭に楔で固定して使います。その名も「アンチョビースペシャル」です!
 イワシやニシンやワーム(人口エサ)などにもどうぞ、と説明されています(笑)。嬉しくなってついお土産で買い求めたものの、その後は忘れるともなく忘れていたのですが先日開かずの釣り具ケースの引き出しの中なら発見してしまいました(笑)。その発見が今回のブログネタになったわけですが、これを見つけてしまった以上、使わない手はありませんね。
 スーパーでイワシでも買ってスズキ釣りとか、ワカサギエサでバスやトラウトもありかな。でもこういうリグが似合う荒っぽい釣りって・・・アメリカナマズ?(笑)

 実釣レポートは追って紹介したいと思います。・・・あれ、エビもサケも関係なくなっちゃった(笑)。

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