2017年2月13日月曜日

マスター・オブ・ライフ或いはファン・カルロスについて

 浦沢直樹氏の傑作漫画のひとつに『MASTERキートン』があります。保険の調査員で糊口をしのぎつつ、いつの日か自分の信ずるドナウ文明の発掘を夢見る市井の考古学者の冒険譚、ミステリーであり、また人情モノでもあります。どのストーリーを読んでも気持ちよく感動できるのですが、中でも「瑠璃色の時間」(第7巻 CHAPTER:3)という物語の冒頭が実に爽やかで心に残ります。
 イングランド、コーンウォールの海岸沿いで路線バスに乗っている少年時代のキートンに、そのバスの運転手が語り掛けます。「坊や目がいいんだな。目がいいと人生は楽しい。」「坊やはきっと人生の達人(マスターオブライフ)になれるぞ。」
 眼鏡が手放せない僕はすでに40代の半ば。僕にもマスター・オブ・ライフに近づくことができるのでしょうか?

眼差しの優しい白髪のダンディ、ファン・カルロス。
もし人生の達人がいるとしたら、それは彼をおいて他にないだろう。

2017年2月10日金曜日

狩人的小話⑦「鶏」

 前回の【狩人的小話⑥「雉」】で、このシリーズ(?)は一度閉じようかと思っていたのですが、フライフィッシングあるいはフライタイイング的な視点で見ると、やはり鶏(ニワトリ)に触れないのもどうかと思うので、最後に鶏についても僕の体験を交えてみようと思います。
 もちろん鶏は家禽なので【狩人的】とは言えないのですが、そこはまぁ完全釣師ゆえの戯言と目をつむっていただけると幸いです(笑)。

スペイン、レオン産ニワトリ。
一般的にはその羽根(ハックル)がコック・デ・レオン Cock de Leon の名称で有名。

2017年2月4日土曜日

鱒料理を幾つか

 魚を食べるなら基本的には海の魚の方が美味しいと思うのだけれど、たまに出掛けた温泉宿などで鱒(マス)の塩焼きがテーブルに並んだりすると、ちょっとした野趣を感じて嬉しい。ただしこれはたまに食べるから美味しいのであって、仮に連泊した翌日の夜も同じ塩焼きが並んだらちょっとげんなりするのは僕だけじゃないはずだ。

 鱒料理でちょっと変わっていて面白いと思ったのは、スペインの確かパンプローナのレストランだったと思うのだけれど、メニューに「ナバラ風」と書いてあったものだ。その土地の鱒料理がどんなものかと頼んでみたのだけれど、やがて湯気を立てて運ばれてきた皿に載っていたのはパンサイズの虹鱒の、薄く小麦粉を振った上でグリルされ、その上に生ハムが重ねられた逸品だった。ハーブの爽やかな香りと生ハムの塩気が鱒の淡泊な身と良くマッチしていて美味しく食べられたことを覚えている。