もちろん鶏は家禽なので【狩人的】とは言えないのですが、そこはまぁ不完全釣師ゆえの戯言と目をつむっていただけると幸いです(笑)。
スペイン、レオン産ニワトリ。 一般的にはその羽根(ハックル)がコック・デ・レオン Cock de Leon の名称で有名。 |
僕は群馬県南部の田舎育ちですが、子供の頃は家で鶏を飼っていました。結構大きなケージだったと思うのですが、子供の頃の記憶ゆえに実際は一坪くらいの大きさだったのかもしれません。昼間は家庭菜園の畑に放したりしながらそのケージ(鶏舎)の中に常時5~6羽の鶏が飼育されていたと記憶しています。矮鶏(チャボ)も混じっていたかもしれません。毎朝生みたての卵を集めるのは僕の役割で、朝の爽やかな空気と鶏糞のにおいの対比が少年時代の記憶に蘇ります。
ある日小学校から帰宅すると、その鶏小屋の脇に羽根が散乱しているのが目に付きました。自宅にいた祖父に聞くと、一羽潰したといつものようにブッキラボウな答え。それまで飼育していた鶏を食べたことはなかったのでちょっと驚いたのですが、なぜ急に家の鶏を食べることになったのかその理由までは分かりませんでした。
恐らくその日の夕食の膳には鶏肉が上がったのだと思うのですが、「鶏を潰した」インパクトの方が大きく、食べたことは記憶が定かではありません。確か父親か誰かが、親鳥だから身が硬くて喰えたもんじゃねぇなんて言っていたような気がします。
こう改めて振り返ってみると、田舎育ちだけあってなかなかワイルドな少年時代だったんだなぁ(笑)。
実は、この鶏を飼育していた淡い記憶は僕の経験の中でかなり強いインパクトを残していて、未だにいつかまた鶏を飼いたいと思っているくらいです。だって鶏がいれば毎日新鮮な卵が食べられるし、フライマテリアルには事欠かないし・・・あれっ?(笑)まぁ今我が身の置かれた都会の借家暮らしを慮ればそんなことは夢のまた夢ですが。
コック・デ・レオン |
そしてここで話は唐突にまたもスペインへ飛ぶことになります。
フライフィッシングを趣味にしている方なら「コック・デ・レオン Cock de León」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。レオン産ニワトリ(雄鶏)と言った意味ですが、つまりレオンと言うスペインの大きな街に産するニワトリの羽根を意味しています。ご存知のように「コック Cock」は英語での雄鶏を意味する単語ですが、スペイン(語)では「ガジョ(雄鶏)・デ・レオン Gallo de León」または「プルマ(羽根)・デ・レオン Pluma de León」などと呼ばれています。
その羽根は、色調は茶系のもの、グレー系のもの、より赤っぽいもの、黒っぽいもの等々細かいことを言えば様々ですが、いずれもそのファイバーには繊細な斑が入り艶やかな光沢があります。また一本一本のファイバーがしなやかでありながら適度の張りもあるのでドライフライのハックルやテイルなどに非常に重宝されます。
僕が巻いたモスカ・アオガダ Mosca ahogada。 |
しかしながら日本ではあまり知られてはいないものの、当地スペインではレオンと言えばその代名詞として使われているフライがあります。それは「モスカ・アオガダ Mosca ahogada」と呼ばれるウェットフライです。モスカとはフライ(蚊)のこと、アオガダは溺れたというような意味のスペイン語で、まさに「ウェットフライ」と言うことになります。テイル、ウィング共にレオンハックルを用い、ボディはシルクフロスとリビング(リブ)と言う、非常にシンプルな言うなればソフトハックル的なフライと言えます。
このフライを2本ないし3本のドロッパーリグ(枝針仕掛け)にして流れの水面直下をダウンクロスで釣るのが当地流のスタイルです。
ウェットフライと言うときらびやかなクウィルウィングの大型フライが特徴的ですが、このシンプルなモスカ・アオガダは小さなサイズでタイイングすることも可能なので、14番或いは16番と言ったフックに巻いて僕のシークレットフライになっています。実際、良く釣れます!
モスカ・アオガダを落ち込みのある淵に流して釣ったイワナ。 |
またこのモスカ・アオガダはスペインでは非常にポピュラーな毛鉤で、それゆえにフライフィッシングだけでなく日本の流し毛鉤の釣りと同じようにも使われています。釣具屋さんを覗くと道糸にプラスチックの飛ばし浮きをセットして何本かのアオガダが結ばれた毛鉤仕掛けがコルクの仕掛け巻に巻かれて売られています。これをスピニングタックルで投げて使うのが一般的です。聞くところによるとこのスピニングタックルでのアオガダ流し毛鉤釣りも結構人気があるそうです。
スペインの友人が送ってくれた写真。 |
フライフィッシング、ルアーフィッシングと言った西洋由来の魚釣りシーンでも日本のメーカーがその役割を主導しているのは、ある意味世界中の共通認識と言っても良いと思います。しかしそれとは別に各地域にはまだまだ我々の知らない美しい世界があるようですね。
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